<18歳選挙権と地方>(2) 若者代表を議会に送りだそう!
地方議会ニュース解説委員 原 英史(株式会社政策工房代表取締役)
選挙権年齢を18歳に引き下げる公職選挙法改正が国会で成立しました。
来夏の参議院選に適用されることが注目されていますが、国政だけでなく、地方選挙(首長選挙、地方議会議員選挙)にも適用されます。
ただ、新たに選挙権を与えられた若者たちが選挙に行くのかどうかは課題です。
若者世代の投票率は、この半世紀の間、大幅に低下してきました。
世代別の投票率データ(衆議院選挙)をみると、
・20歳代は、1967年:66.69%→2014年:32.58%、
・30歳代は、1967年:77.88%→2014年:42.09%。
全世代の投票率は、1967年:73.99%→2014年:52.66%ですから、若者の投票率低下が顕著です。
地方選挙での世代別投票率データは全国レベルで集計されていないようですが、市区町村議会議員選挙の全世代投票率をみると、1967年:76.87%→2011年:49.86%と、国政以上に大幅な下落傾向です。若者世代の投票率もさらに大幅に下落していると考えられます。
こうした中で、選挙権年齢を引き下げた結果、来夏以降、さらに投票率低下につながる可能性も否めません。
もちろん、そんなことでは、18歳選挙権を実現した意味は半減です。
では、どうやって若者たちの政治への関心を高めることができるでしょうか。
有効な手立てのひとつは、「若者代表を議会に送り出す」というムーブメントを作ることではないかと思います。
国会や地方議会における年齢分布を整理してみると、次の表のようになります。
20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | 70歳代 | 80歳~ | |
衆議院 | 0.2% | 8.9% | 26.8% | 33.3% | 22.9% | 7.9% | 0% |
参議院 | - | 6.1% | 20.6% | 37.6% | 23.5% | 11.9% | 0% |
都道府県議会 | 0.1% | 6.3% | 18.0% | 27.2% | 36.5% | 11.2% | 0.1% |
市区議会 | 0.5% | 5.1% | 11.9% | 27.3% | 43.9% | 11.0% | 0.3% |
町村議会 | 0.1% | 1.8% | 5.3% | 19.4% | 53.2% | 19.2% | 0.9% |
(出典)
・全国都道府県議会議長会(2014年7月時点)
・市議会議長会属性調べ(2013年8月集計)
・町村議長会「町村議会実態調査」(2014年7月時点)
国会も地方議会も、20歳代・30歳代の議員は圧倒的に少なく、一般社会なら定年になる60歳代以上の議員が多くを占めていることがわかります。
そして、国会はまだましな方で、市区議会、町村議会はさらにひどい状態であることもわかります。
・市区議会の場合、40歳未満は5.6%、60歳以上は55.2%、
・町村議会の場合、40歳未満は1.9%、60歳以上は73.3%、
という、極端に偏った年齢構成です。
このように、議会と自分たちの世代とが全く隔絶した状態では、若者たちが政治になかなか関心を持てないのも、無理ない面があるのでないでしょうか。
だからこそ、ここに、若者の政治参加を拡大するための鍵があると思います。
とりわけ現状ではほぼ若者世代が皆無に近い市区町村議会において、「若者代表」が立候補し、若い世代の有権者が「若者代表」を送り出そうとする動きがうまれれば、事態は大きく変わる可能性があるでしょう。
もちろん、現状の議会や制度のもとでは、若者代表の立候補が難しいという問題もあります。
平日昼間は仕事のある人たちが、ふつうに立候補できるような議会への変革も必要です。
また、被選挙権年齢(地方議会議員の場合は25歳以上)をさらに引き下げることも検討すべきでしょう。
ただ、こうした議会改革・制度改革を待っているのではなく、それらを前進させるためにも、若い世代が思い切って、一歩前に足を踏み出すことが重要だと思います。
これからの一年間で、こうしたムーブメントが広がるよう、応援していければと思っています。
(地方議会ニュース解説委員 原 英史)
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